起毛革とは、さらさらした手触りや上質な質感が特徴で、日常の中でたくさん使われています。紙ヤスリや金属ヤスリで革にバフがけをして起毛させます。革の種類や起毛のさせ方(削り方)によって呼び方の変わる素材です。

  • ヌバック:牛革 銀面(おもて)/毛足短め、しっとりとした触り心地
  • スエード:子牛、羊・ヤギ革・豚など 床面(裏)/毛足長め
  • ベロア:牛革 床面(裏)/毛足はスエードよりも長め
  • バックスキン:鹿革(牡鹿)銀面(おもて)/鹿の革を使っているものを指す
  • ディアスキン:鹿革(雌鹿)銀面(おもて)/鹿の革を使っているものを指す
  • セーム革:カモシカ革(両面)/主に貴金属を磨くのに使われる

アイテムや目的により、使用する革の素材や使用面・毛足の長さなどが異なります。

ヌバック:牛革 銀面(おもて)

牛の皮をサンドペーパーなどでやすりがけして毛羽立たせた、「起毛革(きもうかく)」と呼ばれる加工皮革で、革製品によく用いられる素材です。スエードやビロード地のような質感があります。もともと、牡鹿の皮を使う「バックスキン」と呼ばれる素材が希少かつ高級品であることから、その代用として作られたのが始まりといわれています。語源は、「newbuck」が訛って「ヌバック」と呼ばれるようになったなど諸説あります。特徴としては、毛羽立たせてはいるものの、毛足が短いので手で触れると柔らかくしっとりとしています。マットな質感で生地も厚みがあるため、落ち着きや上品さ、あたたかさを感じられる素材です。数ある皮革製品の中でもとくに、秋冬モノに人気の定番素材です。ほかの皮革製品と同じように、使い込むほど色が濃くなり、光沢も生まれるなど経年変化の味が出てきます。丈夫で手触りがいい特性を生かし、ヨーロッパでは高級家具へ使われることもあるようです。他には靴やブーツ、ハンドバック、革財布にも使用されます。

スエード:子牛、羊・ヤギ革 豚革 床面(裏)

起毛革といえばスエード、というほど一般的に普及している起毛革です。スエードは薄く削れば削るほど強度が落ちるかわりに、きれいで安定した起毛になります。そのため高級なスエードは薄くてしなやかです。名前の由来には諸説ありますが、スウェーデンから来た女性用の手袋から名前をとったと言われています。(フランス語で「gants de Suede」)

ベロア:牛革 床面(裏)

主に牛など大型動物を加工することが多いので、柔らかさと温かみを感じさせる見た目や肌触りはスエードに似ていますが、豚や羊などの小動物を加工するスエードに比べると起毛感が粗く、カジュアルな風合いに仕上がる特徴があります。比較的に生産量・物流量が多いため、起毛側の中でも人気の素材で、ファッション要素として適度な抜け感やリラックス感を演出してくれます。

バックスキン:鹿革(オス) 銀面(おもて)

起毛したものとなめしたものがあります。天然の傷が付いている場合が多いため、起毛加工は表面を起毛させて使うことがほとんどです。牡鹿の皮を使用したものを「バックスキン」・雌鹿の皮を使用したものを「ディアスキン」と呼びますが、現在の定義的には牡鹿か雌鹿は問わないほか、広い意味では鹿革に似せた牛革や羊革のことも指すことがあるようです。

ディアスキン:鹿革(メス) 銀面(おもて)

ディアスキンとは、雌鹿の皮から創出される鹿革のことをいいます。日本においても弥生時代から、武具や足袋などの生活に密着した必需品アイテムとして活用されてきたとされています。その品質は最上位に位置付けられている革で、中でも「ニュージランド産原皮」を使用したディアスキンは、「レザーのカシミア」と呼ばれてるほど、価値の高い革となっています。また、他の革素材と比較して革繊維内の脂が多いのが特徴です。革は脂分が失われると革繊維が脆くなり、革が裂けやすくなったり、劣化が進みます。ディアスキンは、オイル加工を施さなくとも脂分が十分含まれていることから、長きにわたり使用できる革として重宝されています。革の厚みがあるので、軽くても丈夫な革に仕上がり、実用性のある素材です。細目の繊維構造となっているのため、革表面に対してひっかき傷が付きやすい革となっています。また革の強度は高いのですが、革の表面層(銀面)がやや剥離しやすいため、ディアスキン仕立ての革製品の使い方によっては、キズが多く付いてしまったり、銀面の膨れが生じたりと革財布としての「耐久性」にはやや課題が存在しています。

セーム革:カモシカ革(両面)

主に宝石や貴金属の汚れを拭き取り、磨くのに使われます。ベージュ色の、きめが細かく滑らかでとても柔らかい皮で、時計やメガネ、カメラのレンズなどの汚れを拭くのにも最高の素材とされています。